キン肉マン本編が次回掲載分で400話を迎えます。
400話というのは、2011年11月28日(月)からスタートした新章キン肉マン(新シリーズ)の話数であり、コミック38巻の1話から11年かけて辿り着いた大台ということになります。
直近も、初代キン肉マンの387話超えや、(II世&新章による)週プレ通算1000話達成など、常に記録を更新しながらフルスロットルで突き進んでいる感じですが、来週12月5日深夜0:00になったら、皆さんのTwitterに好きな超人のお絵描きをアップして、400話到達を盛大に祝いましょう!
ハッシュタグは「#祝キン肉マン400回」です。
さて、前述した通り、11月28日(月)というのは、新章キン肉マンの連載開始日になるのですが、11年前の今日、ポータルサイトに掲載された嶋田先生のインタビューがあります。当時、私が取材させて頂いたものです。
このインタビューは、嶋田先生と待ち合わせをして、その辺のカフェか居酒屋で収録しています。つまり、出版社がプロモーションとして場を用意してくれたものではなく、先生がご厚意で受けて下さったインタビュー企画だったわけですね。
私が携帯で写真を撮っている点を鑑みると、カメラマンさんを手配する暇もなく、急遽決まって、本当に時間がない中で取材させて頂いたのだと思います。
というのも、この時「キン肉マンII世」の最終回から、新シリーズの連載開始までは、約1ヶ月ほどのインターバルしかありませんでした。ゆでたまご両先生にとって、まさに漫画家人生を懸けた大勝負であっただけでなく、バタバタの絶頂だったと思うのですね。それでも受けて下さったインタビューが、以下の内容です。
あれから11年...。今もキン肉マンが無料で読めるのは漫画界の七不思議だとさえ思っていますが、WEBの連載だったり、キン肉マン新シリーズに向けた嶋田先生の考えや想いを聞くと、キン肉マンはこれでよかったのだと心から思います。
再掲しますので、改めてご一読頂けますと嬉しいです。
さあ、メモリアルウィークを楽しみましょう!
キン肉マン本日新章スタート、作者ゆでたまご嶋田先生「油の乗り切った30代のキン肉マンをガッチリ描く」~ 2011年11月28日
――まずは、「キン肉マンII世」の連載、お疲れ様でした。
「ありがとうございます」
――初代「キン肉マン」は連載8年でしたが、II世は、セカンドジェネレーション、究極の超人タッグ編合わせて13年です。
「いつの間にか初代を抜いてしまいましたね。II世のほうもテレビで放送することができましたし、アメリカでも向こうの資本でアニメが制作されました。29(ニク)周年のプロジェクトとか、DVDのBOXが出たり、キン肉マニア(イベント)もやりましたし、なんていうんでしょうか、キン肉マンを助走として、II世は花開いたなっていう。
初代の時は、オモチャが出たりはしましたけど、そこまで広がらなかったですよね。今は、当時の読者が大人になって、II世を通じて色々なことが実現した。そういう意味では感慨深いですよ」
――究極の超人タッグ編も最後は圧巻のフィニッシュでエンディングとなりました。キン肉マンの代名詞でもある、至高の必殺技でシリーズに決着をつけるというスタイルは健在で、今回も「マッスルキングダム」というツープラトンが炸裂しました。
「これは苦労しましたね(苦笑)」
――毎シリーズのことですものね(笑)
「マッスルドッキングで終わらせることもできたでしょうけどね。ただ、初代と違うっていうところは出したかったですし、マッスルドッキングは縦の動きですが、マッスルキングダムは横の動きにするとか、そこにお互いの必殺技を組み合わせるとか、本当に考えました。
(ケビンマスクの)ビッグベンエッジと(キン肉万太郎の)マッスルスパークを合体させるって、やろうとはしたんですよ。でも、難しくて、中井君に『無理やな』って言ったら、『できるかもしれない』って。中井君の画の功績も大きかったですよね」
――すでに、ニクラップやマッスルエボルシオンなど、これがフィニッシュでも十分説得力があるツープラトンは幾つも出ましたし、キン肉マンとテリーマンが、カーペット・ボミングス戦で完璧な意思疎通からマッスルドッキングを決める細かい描写も素晴らしかったです。それでも「マッスルキングダム」は、十分超越したインパクトを出しましたね。
「新しく技を出してほしいという読者の期待がありますからね。実際、試合と試合の合間の物語って、できるだけ描くようにはしているんですけど、読者の票が落ちたりするんです。でも、試合になるとガッて上がる。やっぱり皆さん、試合が好きなんだなって、よく分かるシリーズでもありましたね」
――プレイボーイ誌の読者アンケートということですね。
「そうですね。ジャンプみたいにハガキはついていないですけど」
――そして、今年の5月からは、週刊プレイボーイ誌の大幅な誌面のリニューアルにより、「キン肉マンII世」はWEBの連載に切り替わりました。初めて、その話を聞いた際、率直にどう感じましたか?
「自分達はずっと紙でやってきましたから、これはもう集英社でやるのは辞めようと。WEBに行けば、当然単行本の部数も変わるでしょうし、相棒とも相談して『出ようか』って。
――ええっ、そんな相談まであったのですか!?
「次のII世のシリーズの構想とかもありましたからね。これは無理やなって。本屋さんに行くことはなくなっても、iPadやパソコンで漫画を読む人は、まだまだ少ないでしょうしね」
――そんな心境に、変化が生まれたのは?
「やはり、震災でしたよね。僕らの心を変えたのは。僕は、ツイッターをやってるんですけど、震災時にWEBはしっかりと機能していましたよね。また、ツイッターで聞いてみると、被災地に雑誌が届いていないことなんかもすぐに分かるわけです。月曜日発売のプレイボーイ誌でも、未だに火曜日発売、水曜日発売の地域があるっていうのを聞いて愕然としました。
でも、WEBなら即配信できますし、被災地の方を元気づけられるかもしれない。やっぱり、お父さんとか、キン肉マン世代の方が、小さい子を連れて被災地で頑張ってるので、いいかなって。
私も気仙沼に行って、漫画教室とかやらせて頂きましたけど、一番喜んでくれたのは、お父さん、お母さんでしたし、小さい子から『震災後、お父さん、お母さんがこんなに喜んでる姿をはじめて見た』って言われたりもしました。それで決心がつきましたよね」
――それにしても、ビッグタイトルが本格的にWEBで連載され、しかも無料で読めるなんていう話は、これまで聞いたことがありませんでした。
「僕らは、超人(キャラクター)募集とか、II世もののパイオニアでもあった。WEBでも僕らがパイオニアになろうと。僕らがやって、若い漫画家に道を作ってあげたいし、それは32年間やってきた漫画界への恩返しにもなるかなって」
――また、WEBに移ってからは、より一層、ゆでたまごのお二人のエネルギーを感じるようになりました。タッグ編が長いという声も聞きましたが、終盤はお二人の意地に近いような感情が一気に物語をラストスパートに導いたというか。
「ありがとうございます」
――その他にも、扉絵や超人募集など、とにかく読者を楽しませようという試みが随所に見てとれました。
「今も、よくツイッターなんかからメッセージをくれる方がいますが、『本当に超人募集が楽しみだった』とか、中には『今、クリエーターになったのは、超人募集のお陰です』なんていうメールもありました。今までは、シリーズの最初で(超人募集結果を)出す以外に、あまり発表することはなかったんですよ。でも、そんなに楽しみにしてくれていたんだって思うと、『よしWEBに移ったら毎週超人募集を発表しよう』って思いましたよね」
――扉絵も、初代キン肉マンのインパクトが蘇ってきたような迫力でした。
「僕らって、20ページの中に少しでも漫画を入れたいので、あまり扉ページって付けないんですけど、WEBに行ったら扉を入れないと、II世が始まるよって感じがしなかったので扉をつけようとか、初代の名シーンを扉にしようとか。改めて初心に戻ってやりましたよね」
――さて、11月28日からスタートする新シリーズですが、これが初代の連載なんだとか?
「僕らも、II世の新シリーズをやろうと思ってたんですよ」
――私もそう思いました。
「そしたら、出版社のほうから『より強力なシリーズにしてほしい』っていう話があって、その中で『キン肉マンをもう一回できないか?』って。僕は、II世でも一生懸命WEBでやってましたし、キン肉マンを紙にとっておきたいという気持ちもありましたが、中井君が『やろうよ』って言ってくれた。WEBのパイオニアになるためにも、II世でやり切れなかった部分があるなら、それをやろうと」
――ただ、初代には初代のファンがいて、II世にはII世のファンがいますよね。それぞれの年齢層も異なりますが、ターゲットはどのように考えているのでしょうか?
「僕らは、読者が分かっている前提で描くことがあるんですけど、プレイボーイの読者層も下がっていますので、20代の方や、キン肉マンを知らない世代の方にも分かるように。分かっている人からすれば、『知ってるよ』という部分があるかもしれないですし、もちろん、そういう方が一番のターゲットなわけですけど、新しい読者の方も取り込んでいかなくてはならないですから、そこにやり甲斐も感じています」
――幅広い世代に読まれる作品になるわけですね。
「親子二代も多いんですけど、今の中高生の中には、II世のアニメを見て、今も見てくれているという子も多いですからね。僕らも、手塚治虫先生や赤塚不二夫先生、ちばてつや先生のように、その世代じゃなくても、いつまででも読んで貰える作品にしたいですよね」
――では、気になる初代「キン肉マン」新シリーズの中身についても、お聞かせ下さい。
「設定はですね、王位争奪編が終わって、キン肉マンとテリーマンの非公式戦があり、ビビンバとの結婚(第37巻に収録されたスピンアウト作品より)があった。今回の新シリーズは、その後ですね。実は歴史には隠されていますけど、凄い対戦があったんだと。キン肉マンとII世を繋ぐ間に、こんなことがあったんだって」
――それは文庫版「キン肉マン」の最終18巻が出た時、そのあとがきで先生が書かれていたことでもありますね。「『キン肉マンII世』と『キン肉マン』の間を埋めるようエピソードや(中略)まだまだ描いてみたいお話はたくさんあります」と。
「ああ、言ってたんですね(笑)」
――たまたま今日、あとがきを読んでいてビックリしました。
「II世って、ヨボヨボのキン肉マンが出てきて、皆をガッカリさせたところからはじめました。万太郎が産まれるまで、キン肉マンって何をしていたのか。レスラーであれば、油の乗り切った30代の頃のキン肉マン、そこをガッチリ描こうと」
――それは楽しみです。
「あと、II世の中では、キン肉マンもテリーマンも神格化された存在になっていたというか、あんまりアホなことをやらないじゃないですか。でも、キン肉マンは元のキン肉マンに戻して、ドタバタやらせようと思いますね」
――II世ですと、万太郎とケビンが中心でした。今回の新シリーズはいかがでしょうか?
「キン肉マン一辺倒というよりは、各正義超人にスポットを当てて。今まで出てきた超人は、ほぼ全員出てきますし、もう一回、超人というのは何なのか。どんな存在なのかっていうのを描いていきたいですね」
――超人間の対立概念なども気になります。
「II世では悪行超人でまとめられてしまったんですけど、『悪行超人』という括りを嫌がった読者も結構いたんですよ。初代では、パーフェクト(完璧)超人、悪魔超人と、それぞれポリシーの違う超人達がいましたからね。もう一回、悪魔は悪魔、完璧は完璧、正義は正義など、それぞれが持つイデオロギーの違いとかも描きたいです。善対悪って語り尽くせないところがありますからね」
――構想はどのくらいまで?
「最低一年はやるつもりで。全部やろうとしたら3年はかかるかな。ただ、ここはWEBなので、紙のようにゆっくりとはできないと思いますよね。面白いシーンをガンガン入れていかないといけませんが、コミック待ちの人にも喜んで貰えるような作品を早く届けたいです」
――ありがとうございます。聞きたいことは尽きないのですが、聞き過ぎても野暮ですね。まずは、新シリーズ1作目を楽しませて頂きたいと思います。
2011年11月28日 livedoorインタビューより